水はけの悪い畑で野菜を作るための基盤整備のポイント。

露地畑の水はけが野菜栽培に与える影響は大きい 野菜畑と土作り

 畑で野菜を作るのに、畑の水はけが、とても大事です。
 今まで、いくつかの畑で野菜を作ってきましたが、どこで試行錯誤をするか?といえば、畑の水はけをいかによくするかが常に課題でした。
 畑の水はけは土に腐植を増やし土を良くすることも大事ですが、水がはけるような基盤整備もとても大事になってきます。
 この記事では、私が経験から学んだ水はけの悪い土地での野菜畑の作り方についてまとめてみました。

畑の水はけの違いででたオクラ栽培の差

  畑のテキストには、理想的な土は「水もちが良く水はけの良い土」だと書かれています。そのためには、良質の腐植ぶんを入れて、団粒化したほくほくの土を作りましょう、と書かれています。
 それは、確かにその通りなのですが、いくら、そいう土の物理性が良い土を作っても、畑の地盤そのものが水が抜けなければ、どうしようもないこともあります。
 かつて私がJAのオクラ部会に入ってオクラ栽培をしていた時の経験をふりかえってみましょう。

畑で歴然と出たオクラ栽培の差

 部会内では、もちろん同じ品種のオクラを、同じ作型で、基本的には同じような肥料設計で作るわけですが、部会の中でとびぬけて素晴らしい成績を出す農家がいました。
私はまだその頃初心者でしたが、同じノウハウでやって、しかも堆肥は誰よりも入れてるのに、収量はその優良農家の半分にも満たない。自分が努力が足らないのかなと悩んだ時期もありましたが、数年オクラを作って、結局は、畑の水はけが抜本的に違うのが原因、という結論にたどりつきました。
 部会のなかでずばぬけて良品多収の農家の畑は、海の近くで、鍾乳洞がありそうな石灰岩の上に粘土質の土の層がのっているような畑。一方、私の畑は、山のふもとにあり、岩盤の上に粘土質の厚い層がのっているような畑でした。
 私の畑は、水はけがどちらかというと悪いことはわかっていたので、どこよりも高畝にしました。しかし、オクラの節間は20cmくらいに間延びし、葉っも切れ込みが少なく丸い葉になってしまいました。堆肥は炭素率がが高い牛糞を使っているし、徒長するほど窒素過多ではなかったはずです。海端の優良農家に比べ、節間が長いだけでなく、花落ちも多かったため、収量が半分に満たないのです。
 何作か取り組んだのですが結局上手くいかず、ある年、ふと、雨除けのハウスのなかに植えてみました。すると、なんの悩みもなく、きちんとカエデのような切れ込みのはっきりした節間の詰まったオクラになったのです。
 結局、ハウスに入れてはコストがかかりすぎるため、また、ハウス内ではアブラムシが大蔓延するため、オクラ栽培はあきらめたのですが、この時の経験から学んだのは、「畑の水はけの良し悪し」がどんな努力で生まれる差よりも大きい、ということです。
 海辺の水はけのよい畑では、平畝の二条植えで、簡単に整地して植えられます。一方、私の畑では、何倍もの手間をかけて一条植えの高畝を作っても、収量は半分にいかなかったのです。
 その優良農家の畑は、雨の後でもサッと水が引き、雨の翌日には長靴に土もつきにくいほどです。一方、私の畑は翌日まで通路の水たまりの水が引かない状況です。畑に大型トラクターでサブソイラーをかけ、いわゆる深層破壊もやりましたが、下が石灰岩の鐘乳石でスッとみずがはけるような畑のように、改良することはできませんでした。

畑によっては「なんとかならない」こともあるのが農業

この経験から、こと野菜作りに関しては「努力すれば報われる」ということは無い、という厳しい現実を知りました。
同時に、人がやっているからという理由だけで闇雲に努力しても無駄だということ、畑が違えば作り方が違うということも学びました。
 このオクラ栽培を通して、私の水はけの悪い粘土質の畑でも雨除けハウスで水を切れば、良い条件が作れることがわかりました。ただ、単価のあがりにくいオクラではハウスでコスト回収ができない。
そこで、私は雨除けのトマト栽培に取り組むことになったのです。
このように、野菜作りの条件に、とても大きな影響を与えるのが、「水はけ」です。
しかし、水はけの良し悪しを自由に選べない、という現実もあります。
そもそも畑を好きに選べるものでもありませんし、選べる状況にあったとしても、実際の水はけがどれくらいなのか、作を重ねるなかでしかわからないことも多いです。
ですから、出会った畑の水はけの特性にあわせて、そこにあわせた野菜作りの試行錯誤をしていくことが、とても大切になってくるのです。

畑の水はけ改善の方法

基本的には、水はけが悪いところに向いている野菜はありません。
水はけが悪いということは、水が切れない、つまり水分や肥培管理をコントロールできない、ということになります。
理想的には、雨除けハウスに入れて、潅水コントロールをしながら野菜を作ることです。
しかし、ハウスのコストを回収できる単価の野菜はどうしても限られます。
となると、露地のなかである程度、野菜を作っていかなければなりません。
先のオクラの例のように、水はけの良い畑では、悩まず、平畝で基本通りに野菜を作っても、基本的には上手くいきます。
一方、水はけの悪い畑では、どんなに高畝しても上手くいかないことがあります。ただ、そうした悪い条件のなかでも、作らないわけにはいかない…。そこで、わたしは基本的に、次のような手順で露地畑を整備します。

畑の中央を盛り上げる整形をする

ロータリーをあてたり耕運機や管理機で畝たてをする前の段階で、ユンボで10m〜20m幅単位で中央を盛り上げておきます。ユンボがない場合は、プラウで中央に盛るようにしますが、畑と畑の間の仕上がりを考えると、ユンボが良いです。
イメージとしては10m幅で中央がほんの数十cm盛り上がれば良い程度なので、ミニユンボで作業する場合は、だいぶ繊細に作業します。あまり段差をつけすぎると後で苦労しますし、耕運機が横転する原因になったりするので、注意が必要です。
うっすらとかまぼこ型にしてから、そこにさらに1条の高畝を作っていきます。
ふつうにロータリーで整地しただけでは、いくら高畝にしても、通路が凹み、畝の高さがあぜよりほんの少し高くなるだけです。これでは、水はけは改善しません。高畝にしたぶん、余計に水が溜まることすらあります。
畑の周囲にできる畔部分を、あらかじめユンボで、畑の中央に盛っておくことです。これにより、通路から、ユンボで削ったより低い部分へ水がはけていくように整地をしておくことです。

畑の排水路を作る

上記のようにかまぼこ型の区画を幾つか作っていくと、その区画の間が排水路となります。いくつかの排水路の出口にまた、大きめの排水を切り、畑外へ排水を誘導するようにします。
大きめの排水は、トラクターや車がまたげなくて、畑を使う効率は悪くなりますが、水はけの悪い畑で野菜を作るには、これは欠かせません。
よく、平坦な畑にユンボで排水溝だけ掘ることがありますが、それだけは水はけは改善されません。かまぼこ型のブロックを作ったうえで排水溝にするのがポイントです。

水はけの悪い畑でのマルチ

露地野菜ではビニールマルチを使うのが一般的です。ビニーマルチは雑草を抑える意味もありますが、ほんらいの目的は、畝のなかの水分を安定させるためです。
ですので、水はけの良い畑ではバランスよく効果を発揮するビニールマルチが、水はけの悪い畑では加湿の原因となっていることがよくあります。
水はけの悪い畑の平畝で、ビニールマルチを使うのは、よっぽどの旱魃期以外は、逆効果なことが多いでしょう。水はけが悪い平畝では、敷き草のマルチとします。
しかし、高畝にした場合は、水はけが悪いはたけでもビニールマルチにしないと、畝が乾きすぎて、まったく根が張らないことも少なくありません。
高畝を作った時は、ビニールマルチを展開するのが良いでしょう。

以上、水はけの悪い畑で、野菜を作る基盤作りについてポイントを紹介しました。
水はけが悪い畑であればあるほど、排水改善に手間がかかってしまうのはどうしようもない宿命です。しかし、ある程度、基盤整備で地形を修正してなんとか野菜が作れる畑にするしかありません。
逆に、水がすっと抜けるような水はけの良い畑を持っている人は、スタートの時点でアドバンテージがあることに感謝して、その部分を最大限に活かしていきましょう。